日本臨床細胞学会雑誌
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原著
体腔液中の腫瘍細胞における HNF-1β発現に関する検討
町田 知久安田 政実清水 道生望月 紀英川井 健司伊藤 仁梶原 博中村 直哉長村 義之
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2010 年 49 巻 4 号 p. 242-247

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抄録
目的 : 細胞診断における抗 Hepatocyte nuclear factor-1β (以下, HNF-1β) 抗体の有用性と限界を知ることを目的に, 体腔液中の腫瘍細胞における発現態度を免疫細胞化学的に検討した.
方法 : 1) 卵巣明細胞腺癌捺印細胞診標本を用いて, 抗原賦活, 検出法, 発色剤について至適条件を決定した. 2) 83 例のさまざまな腫瘍の体腔液細胞診標本を材料に, HNF-1β発現の有無と陽性症例での発現細胞の割合 (出現率), 組織標本との整合性 (一致率) を検討した.
成績 : 1) pH9.0 の抗原賦活液を用いて加熱処理を行い, ポリマー法で検出することにより短時間で安定した染色結果が得られた. 2) 卵巣明細胞腺癌 4/4 例, 卵巣漿液性腺癌 4/12 例, 子宮体部類内膜腺癌 2/4 例, 肺腺癌 4/15 例, 消化器系腺癌 4/27 例, 膀胱尿路上皮癌 2/2 例に発現を認めた. また, 出現率は卵巣明細胞腺癌で 46%, 肺腺癌で 44%と高率であった. 一致率は卵巣明細胞腺癌の 4 例全例で組織標本との整合性が得られたが, 他の陽性症例中の 6 例で組織との一致が確認できなかった.
結論 : HNF-1βは卵巣明細胞腺癌の診断に有用なマーカーであるが, 他臓器の腫瘍細胞においても種々の程度に発現を認めることから, 診断に応用する場合には出現率および一致率に十分留意する必要がある.
引用文献 (13)
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© 2010 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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